当サイトではこれまで、公務員による盗撮やそれに近い事案を7件取り上げてきた。懲戒処分が分かっているものだけでも、減給から停職6カ月まで開きがある。
本記事では、この7件を比較表にまとめ、人事院・警察庁・防衛省・教育委員会が示す基準と照らし合わせる。組織によって処分に差が出るのはなぜか、基準の違いと個別の事情に分けて整理したい。
盗撮の処分はなぜ組織で差が出るのか

差が出る理由のひとつは、そもそも組織ごとに基準の幅が違うことにある。人事院の指針は盗撮を停職または減給としているのに対し、警察庁や東京都教育委員会は免職も含めている。
当サイトの事案でも、盗撮そのものの処分が分かった3件は、警察の2件が減給、自衛隊の1件が停職4カ月だった。警察の2件は警察庁の指針の幅に収まっている。
自衛隊の1件は陸上自衛隊の基準を確認できなかったが、公開されている統合幕僚監部などの基準に当てはめれば、重い方の区分に相当する長さだ。
ただし、行為の内容や回数、刑事手続きの進み方がそれぞれ異なる。基準の違いだけで処分の差を説明できるわけではなく、これをもって組織全体の傾向とまでは言えない。
当サイトで取り上げた7件の比較
表の上5件が盗撮に関わる事案で、下2件は盗撮そのものではないものの、比較の参考として載せた事案である。
| 事案 | 組織の種類 | 行為 | 懲戒処分 | 刑事手続き | 本人のその後 |
|---|---|---|---|---|---|
| 福岡県警の30代巡査部長 | 警察 | 公園の女性トイレなどで盗撮 | 減給100分の10・6カ月(2024年10月) | 現行犯逮捕、追送検、略式命令 | 依願退職 |
| 広島県警の30代巡査長 | 警察 | 商業施設で靴に仕込んだカメラによる盗撮を試みたとされる | 減給(2024年5月) | 懲役10カ月・執行猶予3年の判決(児童ポルノ所持を含む) | 依願退職 |
| 陸上自衛隊の20代3等陸曹 | 自衛隊 | 飲食店の女子トイレで盗撮を試みたとされる | 停職4カ月(2024年10月) | 逮捕後、示談が成立し不起訴 | 依願退職の予定と報道 |
| 都内の小学校の30代教諭 | 教育関係者 | 勤務先の教室で児童を撮影した疑い | 記事時点で未公表 | 逮捕・起訴。初公判で起訴内容を認める | 記事時点で未公表 |
| 岡山の県立高校の50代事務職員 | 教育関係者 | 商業施設で撮影を試みた疑い | 記事時点で未公表 | 逮捕 | 記事時点で未公表 |
| (参考)大館市消防本部の40代係長 | 消防 | 勤務中に職場の女性専用エリアに入り、トイレのドアを開けた(撮影は記事で確認されず) | 停職3か月(2024年10月) | 記事時点で未公表 | 記事時点で未公表 |
| (参考)岡山地検の50代検察事務官 | 国家公務員 | 職務で扱った盗撮事件の記録から画像をコピーして所持など | 停職6カ月(2026年9月) | 略式命令で罰金30万円など | 依願退職 |
共通していた点
発覚のきっかけは、多くが周囲の人の目だった。広島県警の事案では店舗の保安員、岡山の事案では施設の従業員、自衛隊の事案では被害者本人が気づいている。都内の小学校の事案は、保護者から教育委員会への連絡が発端だった。
本人が容疑や起訴内容を認めていたと報じられた点も、5件に共通する。一方で、福岡県警の事案では数十件、自衛隊の事案では3〜4回、都内の事案では教諭になった約17年前からといった趣旨の供述が伝えられており、発覚した1回だけではなかった可能性をうかがわせる事案が目立つ。
懲戒処分のあとに依願退職した、またはその予定と報じられた事案も、処分が分かっている中で複数あった。処分の種類が減給や停職であっても、結果的に職場を去っている例があることになる。
処分や手続きが分かれた点
福岡と広島の県警はともに減給で、陸上自衛隊は停職4カ月だった。
刑事手続きの重さと懲戒処分の重さは、必ずしも連動していない。自衛隊の事案は示談が成立して不起訴となったが停職4カ月で、広島県警の事案は有罪判決を受けたものの懲戒処分は減給だった。ただし広島県警の処分は判決より前に出されており、単純には比べられない。
都内の小学校と岡山の事案は、記事の執筆時点で懲戒処分が分かっていない。教育関係の処分がどう決まるかは、次の章で見る基準が手がかりになる。
公的な基準と照らし合わせる

各組織の基準を並べると、次のようになる。人事院以外の基準は、それぞれの組織や自治体の職員に向けたものだ。
| 発行元 | 対象 | 行為の区分 | 標準的な処分 |
|---|---|---|---|
| 人事院 | 国家公務員 | 公共の場所などでの盗撮 | 停職または減給 |
| 警察庁 | 警察職員 | 性的姿態等撮影、のぞきなど | 免職、停職または減給 |
| 統合幕僚監部など(参考) | 対象部隊の自衛隊員 | 盗撮を含むわいせつ行為等 | 重大さに応じ、停職3月以上/6日以上3月未満の停職/軽処分 |
| 福岡県教育委員会 | 県の教職員 | 盗撮、のぞきなど | 免職、停職または減給 |
| 東京都教育委員会 | 都の教職員 | 盗撮などの条例違反、撮影処罰法違反など(未遂を含む) | 免職 |
国家公務員の基準(人事院の懲戒処分の指針)
人事院の指針は、公共の場所や乗り物で下着や身体を撮影する行為と、衣服を着けていない状態になる場所で人の姿を撮影する行為を、公務外の非行として停職または減給の標準例に挙げている。指針の最終改正は2020年4月で、性的姿態撮影等処罰法が施行された2023年より前のものだ。
懲戒処分の指針とは?
人事院が国家公務員向けに示した、非違行為ごとの処分の目安。盗撮は停職または減給が標準例とされる。動機や結果、職責、社会への影響、過去の処分歴などを踏まえ、標準例より重くも軽くもなりうる。
この指針は国家公務員が対象で、警察官や教職員など地方公務員の事案とは、あくまで目安として比べている。参考に載せた検察事務官の事案は国家公務員だが、画像の所持に当たる標準例は指針に見当たらず、標準例にない行為は例を参考に判断するとされている。
警察・自衛隊の基準
警察庁は2023年7月の通達で指針を改正し、性的姿態等の撮影やのぞきを免職、停職または減給とした。福岡と広島の県警の減給は、この幅の中で最も軽い区分に当たる。ただし指針は各任命権者が参考にするもので、両県警が実際にどう判断したかまでは記事からは分からない。
自衛隊については、統合幕僚監部などを対象とする達が、盗撮をわいせつ行為等の例に挙げている。重大さに応じて、停職3月以上、6日以上3月未満の停職、軽い処分に分ける仕組みだ。陸上自衛隊の現行の基準は公開情報で確認できなかったため、停職4カ月の事案との比較は参考にとどまる。
地方公務員・教職員の場合
教職員の基準は、自治体によって違いが見られる。東京都教育委員会は、盗撮などの条例違反や性的姿態撮影等処罰法違反を未遂も含めて免職としている。一方、福岡県教育委員会は、盗撮やのぞきなどを免職、停職または減給としており、幅を持たせている。
東京都教委が2026年に公表した処分を確認すると、駅や店舗、路上でスカート内を撮影した事案や、電車内で撮影しようとした事案、職場の女子便所にカメラを設置した事案の計5件は、いずれも懲戒免職だった。一方で、水泳の授業中の児童を無断で撮影するなどした教諭は減給10分の1・1月で、同じ教委でも内容によって処分は分かれている。
文部科学省の調査によると、2024年度に児童生徒への性暴力等で処分された公立学校の教員は134人で、免職が132人、停職が2人だった。このうち盗撮・のぞきは34人で、性交の38人に次いで多い。

標準例は、あくまで目安。人事院の指針でも、動機や結果がとても悪質だったり、職責が高かったり、社会への影響が大きかったりすれば重くできるとされているよ。だから基準が同じでも処分は同じになるとは限らない。比べるときは、基準の幅と事案の中身を分けて見るといいね。
よくある疑問

Q. 不起訴になれば懲戒処分は受けない?
不起訴でも懲戒処分を受けることはある。懲戒処分は任命権者が科す行政上の処分で、刑事手続きとは別のものだ。比較表の自衛隊の事案は、示談が成立して不起訴となったあとに停職4カ月の処分を受けている。
Q. 未遂でも処分される?
処分の対象になりうる。東京都教委の基準は、未遂が処罰される法令違反について未遂も含めて免職としており、2026年6月には、電車内で女性のスカート内を撮影しようとした小学校の主任教諭を懲戒免職としている。
Q. 執行猶予が付けば職にとどまれる?
地方公務員の場合、執行猶予が付いても職を失うことがある。東京都教委は2025年12月、盗撮などで懲役2年・執行猶予4年の判決が確定した中学校教諭について、地方公務員法に基づく失職を公表した。懲戒処分とは別に、判決の確定によって身分を失う仕組みだ。

同じ盗撮でも、どの組織に属しているかで基準の幅そのものが違っていたよね。処分の軽重を比べるなら、個々の事案だけでなく、基準がどう作られているかも見る必要があると思う。

被害を受けた人から見れば、加害者がどの組織の職員かは関係ないよね。基準の違いに理由があるなら、その考え方も含めて分かりやすく説明して欲しいね。
まとめ
当サイトで処分が分かった盗撮の事案は、警察の2件が減給、自衛隊の1件が停職4カ月だった。基準を並べると、人事院は停職または減給、警察庁は免職から減給まで、東京都教委は免職と幅が異なり、組織による差の背景の一つになっているとみられる。
もっとも、比べられたのは少数の事案で、行為の内容も手続きの段階も同じではない。処分の重さを評価するには基準だけでは足りず、都内の小学校や岡山の事案のように処分が見えていないものも残る。各組織が基準の幅の中でどの事情を重く見たのかをどこまで説明するかが、次の論点となる。
出典・参考資料
- 人事院「懲戒処分の指針について」(最終改正 令和2年4月1日 職審―131)/人事院/https://www.jinji.go.jp/seisaku/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html(2026年11月5日確認)
- 「懲戒処分の指針の改正について(通達)」(令和5年7月)/警察庁/https://www.npa.go.jp/laws/notification/kanbou/jinji/jinji20230707.pdf(2026年11月5日確認)
- 自衛隊統合達第14号「統合幕僚監部及び自衛隊サイバー防衛隊における懲戒処分等の基準に関する達」/統合幕僚監部/http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/h_fd/2007/hy20080325_00014_000.pdf(2026年11月5日確認)
- 「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」/東京都教育委員会/https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/staff/personnel/duties/culpability_assessment(2026年11月5日確認)
- 「教職員の服務事故について」(2025年12月、2026年3月・6月の公表分)/東京都教育委員会/https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/staff/personnel/duties/infringement(2026年11月5日確認)
- 「懲戒処分の指針」/福岡県教育委員会/https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/218957.pdf(2026年11月5日確認)
- 「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」2-5-1/文部科学省/https://www.mext.go.jp/content/20251217-mxt_syoto01-000046407_36.pdf(2026年11月5日確認)
- 比較表の各事案の事実関係は、表内リンク先の当サイト記事(各記事の執筆時点)による





