東京都内の公立中学校に勤務していた20代後半の元教員に対し、東京地裁が2026年9月7日、教え子への不同意性交や脅迫などの罪で懲役6年(求刑懲役7年)の判決を言い渡した。
元教員は法廷で生徒との「交際」を語ったが、裁判長は一般的な男女交際とは認めず。教員と生徒の力関係のもとで起きる性暴力の問題を改めて突きつける事案として注目されている。
事件の概要

「交際」から脅迫に至る経緯
元教員は当時、被害生徒のクラス担任。生徒が所属する部活動の顧問でもあった。
2023年夏ごろから生徒と個人的にLINEでやりとりをするようになり、自宅アパートに招いて会うように。同年11月には元教員が告白し、2人の「交際」が始まったとされる。
元教員は生徒と複数回にわたって性的な関係を持ち、その様子を撮影することもあった。押収されたパソコンからは、生徒を写した静止画327点と動画129点、合わせて456点が見つかった。
2024年末には、生徒の異変に気づいた保護者が2人の関係を認知。元教員は保護者に呼び出され、その場では別れると約束した。しかし、その後も関係は続いたという。
高校に進学した被害生徒は、2026年に入って元教員に別れを告げた。しかし、元教員は、その後も連絡をし、生徒が関係の継続に苦痛を訴えると、3月20日に脅したとされている。
報道によれば、「写真をネットに晒すか、今から家族のもとへ行くか選べ」と迫り、人生を壊すといった趣旨のことも告げたという。
また、通信アプリをブロックされた後も、しつこく連絡を取ろうとしていた。
逮捕・判決と処分の状況
生徒から相談を受けた保護者が警視庁に相談したことで、事件は発覚した。元教員は、2026年3月に脅迫の疑いで逮捕・起訴。4月20日には、2024年9月ごろに当時の自宅で生徒と性交し、その様子をスマホで撮影したなどとして、不同意性交等などの疑いで再び逮捕された。
勤務先の自治体の教育委員会は同日、教育長名で被害者や生徒、保護者らに謝罪するコメントを公表。学校では、全校生徒への説明と臨時の保護者会を行い、カウンセラーを派遣するとしたほか、臨時の校長会で全校に再発防止の指導を徹底するとしている。
7月下旬の被告人質問で、元教員は教え子を「好きになってしまった」という趣旨を語り、罪悪感はあったものの気持ちを抑えられなかったと説明した。
撮影については、恋人同士のやりとりを残したかったと供述。相手の気持ちは深く考えなかった、生徒が大人になったら結婚を前提に付き合うつもりだったという旨の供述もあった。
一方で、教師と生徒の個人的な連絡や自宅に招くことは、「あってはならなかった」と認め、今後は子どもに関わる仕事に就かないと述べた。元教師は起訴内容を認めて反省文も提出したが、元教師の親族が示した賠償の申し出を、生徒側は断っていると伝えられている。
検察側は、教師の地位を悪用した悪質な犯行だと主張。生徒の母親は意見陳述で、娘が普通の中学生としての青春を奪われたと訴え、元教員を一生許さないという思いを述べたという。
東京地裁は9月7日、懲役6年の判決を言い渡した。報道によると裁判長は、教師と生徒の間に、性的な行為を自由な意思で判断できる対等な関係は想定できないと指摘した。
また、多数の画像を保存されたうえで別れ際に執拗に脅された生徒の精神的苦痛は大きいとし、生徒や保護者が厳罰を望むのは当然だとも話したという。
この事件を受けて、非行犯罪心理学の専門家は、教員と生徒の間には絶対的な力関係があり、対等で真に同意のある交際はあり得ないとの見方を示している。
また、教員側が対等な交際だと思い込む背景には、現実を都合よく解釈する「認知のゆがみ」があるとし、防止の鍵として教員同士が日常的に本音で対話できる場づくりを挙げている。
どのような罪に問われる可能性があるか

本件で元教員が問われたのは、不同意性交、脅迫、性的姿態等撮影、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の各罪だ。それぞれの規定を確認しておく。
不同意性交等罪(刑法第177条)
2023年7月の刑法改正で新設された罪で、相手が同意しない意思を示すことが難しい状態で性交等をする行為などが処罰の対象となる。
不同意性交等罪とは?
刑法177条の不同意性交等罪は、暴行・脅迫や立場による影響力などで同意しない意思を示すことが難しい状態での性交等を罰する規定。相手が16歳未満の場合も対象になり、13歳以上16歳未満では行為者が5歳以上年長のときに成立する。5年以上の有期拘禁刑に。
本件では、生徒が当時中学生で、元教員が担任という立場にあった。裁判長は、教師と生徒の間に対等な関係は想定できないと述べたとされる。また、「交際」という言葉があっても、この罪の成否を左右するものとは受け止められなかったとみられる。
脅迫罪(刑法第222条)
相手や親族の生命、身体、自由、名誉、財産に害を加えると告げて脅す行為を処罰する規定だ。
脅迫罪とは?
刑法222条の脅迫罪は、本人や親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると告げて人を脅す行為を罰する規定。実際に害を加えたかどうかは問わず、告げた時点で成立しうる。2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に。
本件では、写真をネットにさらすことや家族のもとへ行くことをほのめかして別れを思いとどまらせようとした点が問題とされたとみられる。元教員は法廷で、相手が思いとどまると考えたという趣旨を述べたと報じられている。
性的姿態等撮影罪と児童ポルノ製造
性的な姿を撮影する行為は、2023年7月に施行された法律と、児童買春・児童ポルノ禁止法の2つの面から問題になりうる。
性的姿態等撮影罪とは?
性的姿態撮影等処罰法2条の罪は、正当な理由なく人の性的な姿を撮影する行為などを罰する規定。盗撮に限らず、同意しない意思を示すことが難しい状態での撮影や、16歳未満の者の撮影も対象になりうる。3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に。
児童ポルノ製造罪とは?
児童買春・児童ポルノ禁止法7条は、18歳未満の児童の性的な姿を写した画像などを製造する行為を禁じる規定。本人が撮影に応じていても成立しうる。児童に姿態をとらせて製造した場合は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に。提供目的なら、さらに重い。
本件では、押収されたパソコンから多数の画像と動画が見つかり、この2つの規定の違反についても起訴されている。別れ話の場面でこれらの画像が脅しの材料になったとされる点も、裁判長は生徒の精神的苦痛の大きさとして重く見たと報じられている。

2022年4月に施行された教員性暴力等防止法では、教員による児童生徒への性交やわいせつ行為などを、同意や暴行・脅迫の有無を問わず禁じているんだ。

文部科学省の調査では、2024年度に性犯罪・性暴力等で懲戒処分等を受けた公立学校の教員は281人(前年度320人)で、児童生徒への性暴力等による処分は134人(同157人)だったよ。

免許を失った教員の情報を採用時に確認するデータベースも2023年4月に動き出して、掲載期間は当面少なくとも40年、2026年4月1日現在の登録は2,918件だ。
ただ、防げるのは過去に処分された人が応募する場合に限られ、2024年度の処分者の大多数には処分歴がなかったと報道は指摘しているね。
ネットの声


刑期を終えたあと、別の土地でまた教壇に立つようなことがないのか不安だ。

担任で部活の顧問でもある相手に、子どもが対等に断れるはずがない。これを恋愛と呼ぶのはおかしい。

何が普通の接し方なのか、子どもには見分けにくいと思う。周りの大人が気づいてやれるのか心配だ。

個人的なLINEのやりとりと自宅に招くことが、深刻な事態の入口になっていた。ここで周囲が気づけなければ、外から見えにくい関係のまま進んでしまうことを示しているよね。

懲役6年が妥当かどうかは受け止めが分かれそうだけど、生徒の苦しみを思うと重いとは言い切れないよね。生徒との私的な連絡のルールや相談窓口を、もっと実効性のあるものにして欲しいね。
まとめ
都内の公立中学校で担任と部活動の顧問を務めていた元教員が、教え子との「交際」のなかで不同意性交や撮影に及び、別れを切り出されると画像の公開をほのめかして脅したなどとして、東京地裁で懲役6年の判決を受けた。裁判長は教師と生徒の間に対等な関係は想定できないと指摘し、2人の関係を一般的な男女交際とは認めなかったと報じられている。
東京都教育委員会は2026年3月、勤務校の女子生徒に不適切な私的メッセージを送るなどした別の中学校教諭を停職3月としており、私的な連絡そのものが処分の対象になりうる。
保護者が関係を知った2024年末の時点でも止められなかった本件では、私的な接触の段階で周囲の大人が異変をつかめるかが改めて課題として浮かんだ。教員同士が日常的に本音で話せる場づくりなど、専門家が挙げる対策を学校現場がどう形にするかが焦点となる。





